転職を決意したとき、自らが活躍できる就業先を検討すると思います。
その際、最初に2つの大きな分かれ道があります。
- 「経験のある業界や職種で、スキルを活かす環境」を選択する。
- 「未経験の業界、職種であらたなスタート」を選択する。
多くの方が、1を選択する傾向にあります。実際のところ、どちらを選択したとしても、あなたがこれまで培ってきた経験や技術、そこで感じてきたことは仕事を遂行するうえでの土台になります。
この記事では、あなたの経験や技術などを、より良い転職先へトライするための「武器」にする、キャリアの棚卸し方法を詳しくご説明していきます。
- 目次
キャリアの棚卸し方法1|職務経歴を振り返る
「棚卸し」とは、店舗の商品在庫を的確に把握する、といった活動で使われることが多い言葉です。
転職活動においても、「棚卸し」はあなたにとって適正なキャリアの方向性を示すだけでなく、転職活動の計画の礎になります。より良い転職先の選定とキャリア形成のために、一度ご自身の「キャリアの棚卸し」に取り組むことがおすすめです。
まずは、職務経歴を2つのステップで振り返ってみましょう。
ステップ1.新卒~現在までの経歴
新卒で社会に出てからの、これまでのあなたの経歴を書き出してみてください。まずは社名と部署名くらいの粗さで結構です。
ステップ2.担当した実務業務
次に、勤務先や所属部署ごとに、所属した年数と担当した実務業務を書き出してみましょう。長年同じ企業に勤めていた場合でも、部署や配属先、異動先を書き出してみると、それぞれで担当した職務内容は複数に渡るはずです。
キャリアの棚卸し|事例
ここでは、あなたの職務経験がイラストの例のように、「A社に勤続10年で、営業部に5年、企画部に2年、人事部に3年従事した」と仮定します。
例のような経歴において、部署毎にて経験を積み重ねたスキルは全て違っていたはずです。
この場合、一見、あなたの実務経験でもっとも厚みがあるのは「営業」ということになりがちです。最も長い間担当していた職務ですから、そう解釈する人もいるかもしれません。
ただ、ここで留意していただきたいのは、年数でキャリアの価値の比重は決まらないということです。
入社後に5年間、営業をおこなっていたことは事実ですが、その次に異動した企画職は、営業での成績を評価されての異動であり、それに見合った職務や役職を与えられたと考えることができます。この場合、いわゆる抜擢での異動であれば、「企画」のキャリア価値が高いという見方もできます。
上記のように、部署や職務ごとに役割が変わったことの意味や繋がりを理解できているのは、あなただけです。
面接官や採用担当者に正しく伝えていくためにも、キャリアの棚卸しをおこなう上で、自分のどの経歴の価値が高いのか、どの強みを見初められての異動だったのか、などを見定めて明示していきましょう。
キャリアの棚卸し方法2|職務経歴を具体的にブレイクダウン
職務経歴をすべて書き出せたら、前述した「年数でキャリアの価値の比重は決まらない」という点に留意しながら、どの経歴にどれほどの価値があるかをじっくりと考えてみてください。
先ほどの事例の場合、営業・企画・人事の3つの職務経歴があることになります。価値の比重を判断するためには、下記のA~Cを指標としましょう。
A.年数
B.役職
C.実務内容
次にA~Cそれぞれの指標について、ご説明します。
キャリアの価値を判断する指標【A.年数】
Aの年数は、最も書き出しやすい指標です。
期間が全てではないことはお伝えした通りですが、基本となる指標ではあります。
但し、社会人経験が10年前後になると、いくつかの職務を担当しているケースが多いため、基本的な指標である年数よりも、次にご説明するBの役職やCの実務内容の指標の方が大切になります。
キャリアの価値を判断する指標【B.実務内容】
そして、Bは具体的に何を担当してどのような活動を行ってきたかという実務内容についてです。
これまでに経験したそれぞれの職務において、具体的に何を行ってきたのか、どのような業務を行うことが可能なのかを判断できるようになります。採用担当者は、「あなたが何ができるのか」をそこから読み取っていきますので、担当した職務での実務内容についてはしっかりと振り返ることが大切です。
キャリアの価値を判断する指標【C.役職】
Cは、役職などを与えられていた場合です。
役職者の場合、活動を実行、推進していくだけでなく、チームをまとめてきた経験があるとみなされ、採用担当者はこの点への評価を最大限に行うことが多いです。
「部下を複数名まとめ、企業や部署が求める目的に向かって遂行する役割を与えられた」という「事実」に、評価が与えられます。
企業が違えど、あなたにそれだけの評価がされた証としての経歴になりますので、面接官や採用担当者から見た場合の期待値は必然的に高いものになります。
A~Cの指標ごとに詳細に振り返り、さらにブレイクダウンしていくことによって、あなた自身がこれまでの経歴を踏まえて、どのような職務にあたってきたのかを認識していくことができます。
キャリアの棚卸しの土台となり、転職するために一番大切な活動といえますので、じっくりと取り組んでみましょう。
【参考リンク】
履歴書・職務経歴書は何のために必要か
キャリアの棚卸し方法3|どの経歴を、転職の「武器」にするのか決める
これまでのキャリアについてA~Cの指標に沿って書き出し、自分の職務経歴の認識や価値ある部分の判断ができたら、いよいよ「キャリアの棚卸し」本番です。ここからは、今後の自分の道筋を見定めていく必要があります。
あなたが自分の職務経歴をしっかりと自覚できた時点で、キャリアの棚卸しは80%完了したといっても過言ではありません。残りの20%は、その80%の情報をどのように活用していくかを考え、決断する作業となります。
決断する作業とは、転職活動の方向を具体的に固めるということです。
キャリア形成のための自問自答1【自分は、何を成し得たのか?】
あなたが今後どのような業種・職種に進みたいかを設定した後、さらに振り返って欲しい事が一つあります。
それは、あなたが経験した職務において「何を成し得ることができたか」です。
これから転職活動を始める方は、転職希望先の面接官や採用担当者にはっきりと伝えられるよう、明確な「武器」を洗い出しておきましょう。
「武器」というのは、採用担当者や面接官が、あなたという人材に可能性を見出す大きなポイントである、「何を成し得た人材なのか」または「何を成し得ようとした人材なのか」という点を指します。
この点を整理すれば、転職活動において大きな武器となります。実は、これこそが「キャリアの棚卸し」の本当の目的になります。
キャリア形成のための自問自答2【結局、何がしたいのか?】
転職とは、今後の向かっていきたい方向性の選択に他なりません。
つまり、棚卸ししたキャリアの価値を自分自身で振り返ってみて、どの価値を伸ばしていきたいのか、を自分自身に問うことであり、端的にいうと「結局、何がしたいのか?」ということになります。気を付けたいのは、現職を辞めたいという思いが起点になっている場合、「したいこと」よりも「したくないこと」ありきになってしまい、うまく方向性を出せないことがあります。こういう状況に陥ってしまうと、内定後の最終決断の際に、「したくないことは避けられそうだが、結局、何をしたいんだっけ?」となってしまいかねません。ここではあくまでも、「何がしたいのか」をベースに考える必要があります。
キャリアの棚卸しは、転職活動の第一歩
キャリアの棚卸しとは、時系列で職務経歴をただ書き連ねることではありません。それぞれの経歴において、あなた自身がどのような実務経験を積み重ね、また何を成し得ることができたのかを深堀していく作業です。
そして、価値の高い職務経験 =「武器」をしっかりと認識し、磨きあげていくことで、次のステージへの準備をおこなっていくことになるのです。あなたが自分自身の「キャリアの棚卸し」を丁寧におこなえば、必ず新たな発見や気づきがそこにあるでしょう。