私はもともとその起業するという前提で、この事業を始めたわけじゃなくて、
DeNAの中でAI活用を想定した新規事業開発の部門にいました。
本当にいろんな事業を考えて、まあ今考えるとそれは無理だろと思うような
しょうもないアイディアもいっぱいあったんです(笑)
失敗を繰り返しているなかで、ある日、関西電力さんの発電所のお話を伺う機会があって。
その際に、先ほどお話ししたような、「人だけで発電所の運用計画を作ってる」とお伺いして、まず驚愕しました。「マジか」と。
そしてお話ししている中で関西電力さんからプロジェクトをいただき進めていくことになったのが最初のきっかけでした。
‐ まずは1社からの要望だったんですね。
永田さん:
それがきっかけではあったんですがそれだけではなくて、
他の近しい超大手のインフラ系企業にいろいろお話を聞いてもだいたい一緒なんです。
「人の手で頑張っている」というのは、共通項としてはっきりありました。
これはつまり社会的に未解決であり大きな問題なんだというところに行き着きましたし、
これはやっぱり解くべき意味のある大きな問題だと考え、取り組むことを決断しました。
‐ そうすると顧客先は本当に日本を代表するような大企業ですよね。
必ずしもITやテクノロジーにウェルカムかというとそうではないこともあるのではないでしょうか。
永田さん:
そうですね。やっぱり最初は半信半疑ですよね。
当然、その会社のなかで計画業務に取り組んでいる方は決してサボっているわけではなくて、
全力でやっているわけですから。
それに対して彼らにとってよくわからない技術を使って取り組むことになるので、
「本当に出来るのか」と半信半疑なところからスタートしますし、
我々も初めから彼らの求める120点の成果を出せるか、というと
実はそういうわけじゃありません。
顧客と話しながら一緒に作り込んでいく、そういった形でプロジェクトを進めていくんですがそうすると徐々に良くなっていって。
ある時「これはすごい」と、誰が見ても「おっ!」となる瞬間が必ずくるんです。
つまりは、自分たちの手で頑張って作ってる計画があってそれがベストだと思っていたけれど、それ以上の計画がアウトプットできると一気に信頼を得られます。
言わば相転移の瞬間があるというのは結構強いところですね。
‐ なるほど。顧客にとって、これは自分たちを超えたぞ、というような劇的な変化が起こるんですね。
一方で、それは自分たちの仕事が無くなってしまうような危機感にも繋がるのではないか、
いわゆる「人対AI」のような構図になりませんか?
永田さん:
ALGO ARTISがやっていることは実際極めて高度なことではありますが
すごく平たく言うと、「電卓」みたいなものなんです。
今までそろばんで計算をやってたものに、電卓をポンと置かれて、これで計算が抜群に早くなるよと。
つまり、人が頑張らなくてもいいところを楽にするということです。
今多くの人はPCを使わずに仕事なんて出来ない気がしませんか?
PCがなかった時代ってどうやって仕事していたんだっけと。
もちろん、産業の変化によって何か影響を受ける人がゼロとは言えないかもしれない。
けれどもほとんどの人にとってはより便利に仕事が出来るようになって、
よりクリエイティブな仕事が出来るようになる。
そういう世界の話なんです。
お客さんも、置き換えられた仕事自体にパッションを持っているということはなく、
本当はやらなくていいならやりたくない。
だとしたら、もっと効率よくもっと楽になる、ハッピーになる形を目指しませんか、ということです。
‐ 確かにそれは「敵対関係」ではないですね。
小野さんは実際に顧客に対峙されていても自分たちのソリューションに意義深さを感じる場面はありますか?
小野さん:
僕は今、化学製品を作っているような企業様にソリューションを提供していますが、
実際普段どういう運用してるのかを見せてもらうと、これはちょっと人でやれるレベルじゃないなって。
本当にもうめちゃくちゃ緻密で、正直全部考えきれないみたいなものをされている。
超大手の企業だけではなく結構小さい企業様とかでもそうなんです。これだけの複雑な運用をよくしてこられたなと毎回思います。
そうした現状に対してALGO ARTISのソリューションを紹介させてもらうと、
割と商談の最初から、それができたら本当にいいねと、いい反応もらえることも多いですし、やっぱ実際に導入して使っていただき適宜チューニングしていくと、
元の業務より良くなってきた、抜群に楽になった、と仰っていただくことが多くあります。
だからこそ自分たちの価値提供の実感、手触り感がすごくあると感じます。
‐ 前回お話ししたように、今までは顧客と一緒にソリューションを作っていくという形を
事業としては捉えていたと思いますが、そのなかで昨年、新規事業をローンチされました。
新しく事業をやろうというのはなぜだったのでしょうか。
永田さん:
はい。これまでALGO ARTISがやってきたのは、お客さんごとにしっかり寄り添って、
1社1社に対してカスタマイズしてソリューションを提供してきました。
それはものすごく評判もいいですし、実は今まで運用開始してから解約したというケースはゼロなんです。
‐ ゼロはすごいですね。
永田さん:
すごく評判はいいのですが、一方で、我々はどうなりたいんだっけ?というところに
立ち戻ると前回言ったような、PCがある前と後の変化のように、
根本的にやり方が変わる、世の中が変わるというスケールを目指さないと
「スタートアップの生き様」としてはイマイチだと思うんです。
1社1社とプロジェクトを組み、エンジニアが張り付き長いリードタイムのプロジェクトを推進する。
それはとても価値があることですが、ともすれば自分たち自身が「属人化」してしまっていないか。
結果的に費用も高く、世の中の企業に広く提供できるわけではない。
それらを踏まえて、これまでやってきたことをもっとプロダクトに落とし込む形で
第2の柱となる新規事業を立ち上げ、それによって広く多くの顧客に価値提供
できるようにしたいと考えたのがきっかけです。
‐ 「スタートアップとしての生き様」…。興味深いです。
永田さん:
そもそもスタートアップはなぜ必要なのかと考えると「世の中を動かす」ため、という
大前提があると思っています。
すでに世の中は既存の産業でまわっていますよね。
そんな中で、上手くいくかどうかも分からない、体力も小さいスタートアップが
社会的になぜ許容され必要とされるかというと、
既存産業でできないことをやるというのはスタートアップの使命なんですよね。
じゃあ既存産業でできないことは何かと言うと、
リスクがあることや、うまくいくかは分からないことをやる、というのがスタートアップの役割だろうと。
極端に言えば、うまくいく蓋然性が高いのであれば大手企業がやればいいと言えますし、
実際にやっていると思います。
だからうまくいかないと思われることをまずやるというのは
スタートアップの存在意義だと思っていて、自分たちもそうありたいと思います。
さらにその先に、いかに成長して世の中を変えられるかという目線は持っていないといけないと思っています。
例えばスポーツの世界で、優勝を目指さなければ優勝できないと同じように、
「世の中を大きく変えてやろう」と考える上での物事の意思決定や攻め方と、
細々と生きていればいいやっていう目線でのそれは根本的に違ってきます。
‐ 実際新規事業をスタートされて手ごたえは感じていますか?
永田さん:
僕からと、新規事業を実際にやってくれている小野さんそれぞれからお話し出来たらと
思いますが、僕としては思った以上に上手くいっているという感覚です。
というのも、新規事業なんて一発一中というわけにはいかないので、必ず失敗する。
1回2回は大きくピボットするかなとも思っていました。
もちろん、その時々はいろんな苦しみはありますが、すごく引いて見てみると
かなりうまくいっていてすごいなと思います。小野さんはどう?
小野さん:
そうですね。新規事業としては相当うまくいってる方だと思います。
もともとのALGO ARTISの最適化の技術や顧客基盤があってのスタートなので、
ちゃんとニーズを捉えられているというのも、もちろんあると思います。
また、顧客の声を聞いてすぐに改善を加えられる、要望を形に出来るメンバーたちがいるというのも心強いです。
実際初期に導入いただいている顧客からもすごくいい反応をいただいていて、
順調に進められています。
‐ 新規事業が最初からそんなに順調というのは珍しいですよね。
次の記事へ続く…なぜ新規事業がスタートから順調なのか、ALGO ARTISの成功の秘訣やこの先の未来、スタートアップだからこそ得られる自分の成長について伺っていきます。
撮影場所:Wework神谷町トラストタワー 共用エリア