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シリコンバレーの起業家が語る「これからのエンジニア」│柴田 尚樹 氏(後編)

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Co-Founder 柴田尚樹 氏 (Naoki Shibata, Ph.D.)

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これからのエンジニアはどうあるべきでしょうか?

ソフトウェアエンジニアにとって大事なのはやっぱり、コードを書けるってことだと思いますよ。

僕自身についていえば、プログラミングを本格的に始めたのは大学に入ってからです。遅いですよ、僕は。普通、こちらの連中はみんなもっと早くから書いていますからね。

日本にいるときは、開発だけでなく、経営企画だとか、いろんなことをやっていたんですが、こちらに来ると、日本語でやるようには、気の利いたこと言えないじゃないですか、やっぱり(笑)。だったら、徹底的にコードで語るしかないな、と。

ソフトウェアエンジニアって、できる人とできない人の差がはっきりしていて、それこそ、100倍位生産性が違ってくると思います。生産性が高い側に行けば、職にあぶれることはないことはもちろん、世の中を変えられて楽しいですよ、きっと。そちら側に行く努力をするのがいいと思います。

あと、間違いない流れは「モバイル」ですね。スマートフォンのポテンシャルがこれだけ顕在化すると、本当の意味で世界中の人にインターネットが行きわたるのは、やっぱりモバイルだと痛感します。モバイルは、間違いないですね。

一流を目指すエンジニアは、どのように能力を高めていけばよいでしょうか?

ハードルは高いですが、一番いいのはオープンソースのコミュニティに入ることでしょうね。オープンソースは文字通り利害関係がないので、自分の腕だけで良し悪しを判断されます。オープンソースでソフトウェアの一部をつくって、それが採用される、というのが一番いいと思います。いきなりそこまで行くのは確かに簡単ではないですが、最近は自分のソースコードを公開する手段が色々とあるので、どんどんそれを公開して、人目にさらしていくってことじゃないですかね。いいものを作ればみんな見てくれますし、認めてくれますから。それを自信にして、また新しいことに取り組む。これをやっていれば、能力は高まっていくと思います。

僕もエンジニアを面接するときには、これまで書いたソースコードを全部見せてもらいます。もちろん、業務でつくったものは公開できないでしょうけど、個人のプロジェクトでやっているものはあるはずです。もしそれが無いなら、「ん?」という感じはしますね。優秀な人は必ずと言っていいほど、何かしらソースコードを公開しているものです。

そういう意味では、エンジニアはブログなんて書かなくていいんですよ。「ブログはコードを書けない人のもの」ですから。「ブログなんか書いていないが、とにかくソースコードを見てくれ」、というのが本当だと思いますね。それ位、ソースコードは強烈ですよ。それ自体が自分自身のアセットになりますしね。研究者が論文書くのと近いと思うんですよね。ソースコードはどこの国の言語か関係なく、ユニバーサルなものですから、いきなり海外からコンタクトがあるかもしれませんよ、本当に。

あとは、やっぱり優秀なエンジニアと働くことでしょうね。たとえばGoogleなんかは、必ず他の人がソースコードをレビューすることになっています。優秀なエンジニア同士がそういうプレッシャーでやっていくのは、個人としての成長にも確実につながると思いますよ。

エンタープライズ系のエンジニアが、コンシューマー系のネット産業で活躍できるかという点について、どうお考えですか?

インフラ寄りのところはいいと思うんですよ、「データベースを3倍速くしてください」といった領域なら。ただ、コンシューマー寄りのアプリケーション開発については、慣れるまでは大変だと思います。技術的には互換性があるとは思うんですけど、開発のやり方が違いますよね、やはり。

これまでエンタープライズ系で、ひとつのプロジェクトを2年かけてやっていた人が、「じゃ、アジャイルで、2週間で。」という世界に来れば、それは確かにギャップがありますよね。エンタープライズ経験が長すぎる人は、正直言って厳しいかもしれません。決定的に重要なのが、「誰のために作っているのか」ということなんですよ。

エンタープライズ系の人にありがちなのが、「ユーザーへのサービス精神がない」というケースです。「発注元の担当者や上司のために作っちゃう」というパターンが最悪ですね。そういう人をみると、「上司とけんかしてもいいので、ユーザーのために仕事してくださいよ」と言いたくなりますね。そういったマインド面が切り替えられる人であれば、コンシューマー側にいった方がいいですよ、面白いので。

後は、エンタープライズ系とは少し違いますが、理系のエリートが、大学院から大手メーカーの中央研究所などに行くケースが良くあります。そういう人で、若くてイキがよく、ウズウズしている人なんかは、オンライン側に来ると大活躍できる可能性があると思いますよ。ベースの能力は確実に高いはずなので。

日本の大手ネット企業は、世界で勝てると思いますか?

十分に可能性はあると思います。ただ、やり方によると思いますね。シリコンバレーに限って言えば、日本のネット大手が、自力でオフィスをゼロから立ち上げて、こちらで人材も採用して..というのは失敗すると思います。日系ネット大手が勝つには、投資、買収ですよ。会社を買うしかないです。ひたすら、買っていく。そうすると買収先の創業メンバーが、辞めちゃったりするんですよ、ストックオプションを行使して。でもそれは仕方ないんです。

シリコンバレーでは日常的に起こっている「永遠のテーマ」ですから。ユーザーベースをガッチリ握って、サービスを乗っけて、さらに次の会社の買収に向かっていくのがいいと思います。DeNAがngmocoを数百億円で買収しましたけど、正しいですよ。買収金額が高いって言う人もいますけど、そんなことはない。GoogleとYouTubeもそうですよ、1500億円という買収金額は、今から考えたらGoogleにとって決して高くないでしょう。日本企業でも、キャッシュを用意できて、M&Aを積極的に活用するセンスのあるところは、世界で十分勝機があると思っています。

最後にこの記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。

ソフトウェア産業に優秀な人が行ってほしいですね。エンジニアも、そうでない人も。確実に世の中を変えますから。日本のGDP拡大にも一番貢献できると思いますからね。

ブロックバスター(Blockbuster Inc. 米国レンタルビデオ大手)が倒産したんですよ。ネットフリックス(Netflix,Inc.)がやっつけたんですけどね。この意味を良く考えないといけない。もう、DVDもCDもディスクを店舗でレンタルする時代ではないです。ネットフリックスは、もともとDVDを郵送でレンタルして伸びた会社ですが、トレンドがオンラインに移行すると確信したのでしょうね、他社にやられる前に、自分たちでストリーミング配信にドバっと投資しましたからね。

もう、そういう時代だと思います。

シンプルな二択にすると、「オンライン側」か「オフライン側」か、です。
百貨店で働く方がいいのか、楽天で働く方がいいのか。書店で働く方がいいのか、アマゾンで働く方がいいのか。ブロックバスターで働いた方が良かったのか、ネットフリックスで働いた方が良かったのか。
今の日本で、優秀な人材が百貨店で働くとしても、やることがあまりないんじゃないかと思いますよ。

一方で、繰り返しになりますが、日本のネット企業に対して僕はOptimistic(楽観的)ですよ。確かに、世界で勝つには時間がかかるかもしれません。でも、正しいと思いますよ、やっていることは。キャッシュを持っていますし、さらに資金を調達する能力もある。若いですしね、みんな。若いっていいことです。あと5年で終わりだと思っている人が作るプロダクトと、あと30年現役だと思っている人が作るプロダクトは、やっぱり違います。若くて優秀な人が、どんどんソフトウェア産業で“Hack”してくれればいいなと思います(笑)。

柴田 尚樹氏へのインタビュー記事

・自分が得意なことをやればいい。 日本人起業家がシリコンバレーで感じた大切なこと | 柴田 尚樹 氏(前編)
・自分が得意なことをやればいい。 日本人起業家がシリコンバレーで感じた大切なこと | 柴田 尚樹 氏(後編)

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