Sansan株式会社
サービス本部 開発部 アーキテクチャ・インフラグループ
グループマネジャー
藤倉成太 氏
中央大学理工学部精密機械工学課卒業後に株式会社オージス総研入社。プロダクト関連ビジネスの事業部にてミドルウェア製品の導入コンサルティング業務を経て OGIS International, Inc. に出向。シリコンバレーでは R&D や現地ベンチャーとの共同開発等に従事。Sansan株式会社に転職後は B2B の名刺管理ソリューションである「リンクナレッジ(現・Sansan)」の開発部門にてアーキテクトを担当。
これまでのキャリアについて、教えてください。
私はもともとSIerに勤めていたのですが、その中では割と特殊な経験をしていて、アメリカのシリコンバレーオフィスに勤務するチャンスがありました。シリコンバレーでの業務は、新しいテクノロジーやそれをベースにしたプロダクトを日本に持って来るという、「ネタ探し」が主なミッションでした。
まだプロダクトとして弱い場合は、日本から資金や人的リソースを投入し、プロダクトとして完成させて、日本に持ち込むといったことをしていました。
そのため、SIのバックグラウンドといっても、R&Dとプロダクト関連のビジネスでしたので、やや稀な経験かもしれません。30歳を迎えるにあたり、「自分の仕事が、何らかの価値に結び付いているのか?」と漠然と考えた時、それは「技術的に難易度が高いものをいち早く取り入れて、現場にパスするだけの仕事」であり、「技術のための技術」なのではないかと、ハッとしたのです。
「このままではいけない。もっと技術を具体的な価値に結び付けるようなものに携わっていかなければならない」と思ったのが、転職を考え始めたきっかけでした。
しかし、実際に転職活動を開始してみると、思い描いたような会社はなかなか見当たりませんでした。「高い技術力を持っています」「世界を目指します」という日本のベンチャーはたくさんあるのですが、自社のプロダクトだけではやっていけず、どうしても、日銭を稼ぐための受託開発をやらざるを得ないという会社が多かったのです。
そんな中で、弊社社長の寺田と出会いました。寺田は「Sansanでは、受託開発をやるつもりは一切ない。今、製品として立ち上がっている『Sansan』を皮切りに、名刺を核にしたビジネスだけで、世界と勝負する。」と明言していたので、「これはなかなか骨太だな」と興味を持ったのです。
Sansanへの転職は、どのようなポイントが決め手になったのですか?
当時は、まだプロダクトの形が明確になっておらず、「ウェブ上で名刺管理ができます。以上。」というものでした。そんな状況のSansanに賭けようと思ったのは、とにかく「他にない会社」だと感じたためです。転職活動当時の日本では、アメリカで既に流行っているサービスを、日本でも展開するというタイプのベンチャーが多かったのですが、私はそこにあまり魅力を感じていませんでした。
そんな中、その流れに乗っかることなく、「名刺」に特化したビジネス、しかも、その後の展開が大きく見えるポテンシャルの高いビジネスをやっているSansanに出会って、「これだな」とピンと来たわけです。 それに、社長の寺田もシリコンバレー駐在を経験しており、私と非常に近い感覚や原体験を持っていたことも、一つの大きなポイントでした。私はエンジニアですから、「日本のエンジニアが、世界で通用するようでありたい」という思いを強く持っていたのです。
例えば、インド人エンジニアは、「数学や情報工学のベースが強いので、信頼できる」といったブランディングがなされており、キャラクターとしてもしっかりと立っているのですが、日本人エンジニアはそうではありません。特徴が無いと思われて、日本市場向けのローカライズなどにアサインされている場面を多く見てきました。そして、それが残念でなりませんでした。
だからこそ私は、世界で勝負できるポテンシャルのある企業で、「経済価値に直結するコードを書きたい」と強く思っていたのです。Sansanという会社もまた、創業時から「日本から世界に通用するサービスを生み出す」という想いの下に、グローバル志向を持っている会社ですので、その点でも、十分に勝負できる素地を持っていると確信し、最終的にSansanへの転職を決断しました。
優れたエンジニアがSansanで働く醍醐味はどのようなところにありますか?
ソーシャルゲーム会社など、ビジネスとして勢いのあるネット企業がたくさん出てきていますから、エンジニアとしては転職先をいろいろと迷う時代なのかもしれません。
確かに、ソーシャルゲームをはじめとしたビジネスも「テクノロジーが育っていく土壌としては」意味があると思います。
大量のトランザクションをさばく技術などは、ソーシャルゲームのように「作っては壊す」を繰り返しているからこそ、育ってきたテクノロジーだと思いますしね。
しかし、「ハードルが高いことに燃える」というタイプのエンジニアであれば、我々のように「一つの骨太なサービスを作りこんでいき、世界に通用するものにしていく」ということに興味をお持ち頂けるのではないかと思います。
「賞味期限の短いプロダクトを、量産し続ける」のではなく、骨太なサービスを作りこんで、それを常にブラッシュアップしていくということは、「過去の資産をずっと引き継いでいく」ことを意味します。これはこれで、ソフトウエアの深遠なる課題といいますか、簡単には向き合えない重要な課題ですので、非常に興味深いです。
あともう一つは、技術面というよりも、存在意義です。「世の中を変える仕事をしませんか?」という話です。私もゲームは好きで、ビデオゲームもソーシャルゲームもやるのですが、それはそれで娯楽として非常に優れているものの、少なくとも「良い方向に」世の中を変えるものではないと、個人的には思います。一方で、FacebookやTwitterは、人類の歴史を良い方向に変えつつあると感じています。
まさにこういうものを作っていきたいですし、ここにこそエンジニアとしての醍醐味があると思うのです。シリコンバレーでは、エンジニアは地位が非常に高くて、「偉い」のです。なぜかというと、「世界を変える力を持っているから」です。
ゲームを作れるから偉いのではありません。日本のエンジニアの地位は、もっともっと高くていい。 ただ、そのためには、一人一人が世の中を変える気概を持っていること。優れたエンジニアの方はぜひ、自分の力を、そのような方向に向けてほしいと思います。
Sansanのエンジニアは、世の中をどのように変えることができますか?
私たちがやろうとしていることはLinked inに近いものがあります。つまり、人がつながることによって、よりビジネスパーソンとしての働き方や体験が豊かになるというか。
私たちエンジニアは、営業職ほど頻繁に名刺交換をしませんが、そんな中でも、受託開発の中で悶々としながら開発をしているエンジニアの方々を見ると、「もったいない」と感じることがあります。もう少し、ビジネスパーソンとしての繋がりを広げられたなら、より成長が加速するのではないかと思うのです。
例えば、何かのプロジェクトにアサインされ、エンドユーザー、プライムのSE、そして、2次請けのSEがいるとします。そこで、名刺交換が行われたとしても、単なる通過儀礼にとどまり、その名刺は何にも活きないわけです。
しかし、我々のサービスを使えば、名刺情報がそのまま「本人たちの出会いの証」としてストックされて存在し続け、たった一度のその名刺交換が、その後も一生を左右する大きな縁に発展する可能性があるわけです。
そうなると、名刺交換はもはや単なる紙の交換ではなくなってきます。まさにLink Knowledgeは仕事を通じた人と人との関係を再構築できるポテンシャルを持ち、世の中を変えることができると思うわけです。
直近では、営業職や経営者の方などが、サービスの第一のターゲットになると思いますが、私個人としては、エンジニアも含めて、日本の商習慣や縁のあり方を良い方向に変えさせるようなものにしていきたいと思っています。
藤倉さん自身、エンジニアとしての働き方や考え方は変化しましたか?
私自身も昔はそうだったのかもしれませんが、エンジニアは理想を追い過ぎる傾向にあると思うのです。「こうして、こうなったら、とても美しいではないか」、と。 理想から物事を追及していくことは重要なことだと思うのですが、実際にサービスを生み出す現場ではそうでないことの方が多いと思います。
例えば、Facebookにしても、いきなり大きな構想から取り組んだのではなく、ハーバード大学の学生名簿からスタートしていますよね。そこになんらかの課題があり、それを解決したいという思いがあり、実際に作ってみたらとても便利で、多くのユーザーに支持された。
そして、続けていく中で、ビジョンや、より大きなスケールを担う責任感といったものが生まれてきた、という流れだと思います。いきなり今のFacebookのようなものを、「ドンとやりましょうよ」といったところで、簡単にはうまくいかないでしょうしね。
まずは、目の前にある課題を具体的に解決するところから始めて、さらにその先の理想的なビジョンまでをきちんとつなげていくことが大切なのだと思うのです。私がSansanに惹かれた理由も、そして、Sansanが成長している理由も、ここにある気がしています。目の前の課題を解決することは、泥臭い感じなんですよね。
でも、「イノベイティブなことは、後からついて来る」のだと気づきはじめました。学生名簿を作ろうという、Facebookの当初の企画自体は、破壊的なイノベーションでもなんでもないわけです。ただ、その世界の先には、人類の歴史を変えるようなものが存在していたわけです。それを最初から見据えていたかどうかはどうでも良くて、自分たちがその時その時に判断をしながら、「我々の理想は何か」ということを追及すればいいと思うのです。
自分なりに納得する理想と目の前の課題をきちんとつなげて、今やっていることが5年後、10年後の何かにつながるのだということを日々考えながら、ソースコードを書くことができるといいなと思っています。
もちろん、エンジニアとして最新のテクノロジーを追いますが、私たちは一度判断すると後戻りがしづらい、骨太なプロダクトを作っています。そのようなぎりぎりの状況下で新しいテクノロジーに対する判断をしていく難しい仕事を、ぜひ優秀な方と一緒にやっていきたいと思いますね。
最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
転職について考えている方にお伝えするとしたら、「迷っているのであれば、ぜひ、動いてみてください」ということです。私も採用の場面で、多くのエンジニアさんとお会いするのですが、そもそも転職に躊躇されている方が多くいらっしゃいます。
でも、エンジニアはいろいろなことを経験したほうが良いと思いますし、本当に課題を解決できるエンジニアであれば、引く手数多で、食い逸れることはないはずです。
エンジニアとして優秀であれば、たとえ転職に失敗したとしても、働き口はいくらでもあると思いますから。身動きが取れずに不安を感じているのであれば、とにかく動いてみて、力をつけるのが先決だと思います。
そうすれば、あとは、自分が本当に思い入れを持てるものをいくらでも選べますからね。若くて優秀なエンジニアが、「安定しているかどうか」で転職先を決めるのは、あまりにもったいないと思います。貴重な人生の時間を無駄使いしているのではないかと思うほどです。
特に若い20代であれば、なおさらチャレンジしてほしいものです。「世界に通用する、骨太なプロダクトを開発して、日本人エンジニアの地位を世界でもっと高めましょう!」と伝えたいですね。
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