日本の成長企業

八面六臂の挑戦 - 日本のオイシイをつくる。

八面六臂株式会社
代表取締役 松田雅也 氏

京都大学法学部卒業後、UFJ銀行、ベンチャーキャピタルを経て、2007年エナジーエージェント株式会社(現・八面六臂株式会社)を設立し代表取締役に就任。2011年に、「鮮魚×IT」をテーマにした八面六臂サービスを開始。

八面六臂の事業内容について教えてください。

一言でいうと、「鮮魚×IT」で、「料理人にとってのAmazon.com」になる、という事業です。具体的には、飲食店に対して、独自のアプリをインストールしたiPadを貸し出しています。このアプリは、当社の顧客店舗専用の受発注アプリなのですが、料理人が常に最新の鮮魚情報を得ることができ、そのまま発注することができます。対象となるのは、大手のチェーン居酒屋といったタイプのお店ではありません。料理人がしっかりと素材を吟味し、しっかりと料理したものを出すようなお店です。例えば大人になって昔の友達と久しぶりに会う時などは、高級店とまでは言わないまでも、食べて飲んで6000円~8000円くらいの地元の美味しいお店に行く人が多いのではないかと思います。まさに、そういうお店が対象です。

私たちはこれまでの売り手都合だった流通構造を改革して、中間の納入業者にかかっていた無駄なコストを削減しますから、料理人にとっては同じ金額で仕入れられる鮮魚の質が上がります。ということは、同じ客単価でも本当に美味しいものを提供することができ、お客様から「美味しかったよ、ありがとう!」という言葉をより多く頂くことが出来るようになります。八面六臂のミッションは、「日本のオイシイをつくる。」ですが、まさにこのために事業を行っています。

ただし、これを実現することは簡単ではありません。鮮魚は商品劣化が24時間で起こってしまう商品なので、「需要と供給の結び付きを、いかに早くするか」が重要であり、そこでカギになるのはまさに「情報処理能力」なのです。よって現在の私たちの事業内容は、「ITを徹底的に活用し、鮮魚流通をあるべき姿にすること」だといえます。

どのような課題感で、この事業を行っているのですか。

日本の飲食店は、チェーン店が約20万店舗、中小個店が約50万店舗あるといわれています。本当は日本の食文化は世界に誇るべきもののはずなのに、「安くてまずいチェーン店」が増えすぎたことによって日本の食文化が衰退し始めています。これは、目先の利益を求める飲食店と、前近代的な流通業者が原因となっています。鮮魚の流通は驚くほど遅れています。例えば料理人が「旬のカツオをお客様に出したい」と思ったとしても、通常の納入業者に発注すると、カツオが一本単位で届いてしまいます。カツオを半身で欲しい、というオーダーは面倒くさがられてしまうからです。完全なる売り手都合です。しかし、普通の居酒屋さんがカツオを一本使い切るのは結構大変です。一晩では使い切れないから、ランチでも出そう、ランチで出してもまだ余るから、次の日も出そうといってどんどん鮮度が落ちてきます。そうすると、3日目のカツオを食べたお客さんは、「カツオって美味しくないなー」といって、カツオが嫌いになってしまうかもしれません。青魚はみんなそういうリスクをはらんでいます。味もすぐに変わってしまいますから。アジなどもそうです。5キロ箱でだいたい25匹入っていますが、普通の居酒屋さんではそんなにたくさん使いきれません。そうするとロスが出てしまうので、「もうちゃんとした魚を使ったメニューは原価率が悪くなるから、出すのをやめよう」となってしまうのです。

また、コスト構造にも課題があります。漁師から産地市場への流通総額を「1」とすると、最終消費者である私たちが払う金額は「10」になっているという具合です。その間には多大なムダが隠れています。ここを「あるべき姿」に改革したいというのが私たちの考えです。

料理人がiPadでカツオを発注してから、実際に半身の状態で届くまでのプロセスには多くの困難があるのではないですか。

確かにありますが、これはやるしかないのです。今までそこをきちんとやる人たちがいなかったからこそ、日本の食文化が衰退しつつあるわけですから。八面六臂は、まずは「鮮魚流通におけるAmazon.com」を目指すとお伝えしましたが、鮮魚は書籍のように在庫ができないので、毎日入荷情報をアップデートしてやっているわけです。それが面倒かといえば、その通りです。鮮魚は一つ一つ個体差がある商品ですので、クレームも発生します。さばいてみたら少し痛んでいたという話も出てきます。よって、裏側のプロセスの構築に苦労が伴うことは確かです。

しかしながら、重要なのはそこではありません。最も重要なのは「マーケティング」です。つまり、八面六臂を導入して、毎日鮮魚を注文してくださる飲食店を増やしていくというマーケティング、顧客である飲食店の方々に最高の満足を提供し続けるためニーズの把握や改善という意味でのマーケティング活動が最も重要なのです。私たちのビジネスモデルを聞くと、「産地に行って漁師の方々を説得して、といったことに苦労したでしょう」とよく言われます。確かに大変ですが、それはあくまでも価値を提供する過程の話です。創業時の苦労話よりも、これからどれだけ多くの飲食店の方々に支持され、日々使って頂けるか、「流通高がどれだけ多くなるか」が決定的に重要だと考えています。

それではぜひ、今後の成長についてお話をお聞きできればと思います。

2020年に国内外合わせて年商1兆円企業になることを目指しています。どうやってそこまでたどり着くか、フェイズごとの戦略を考えています。これまでお話ししてきた鮮魚流通のAmazon.comというのはあくまでもフェイズ0、つまり、今まさに取り組んでいるところです。

フェイズ0:鮮魚流通のAmazon.com
料理人が八面六臂を通じてリアルタイムに欲しい魚をチェックし、注文できるという仕組みを、多くの志ある料理人に広めて流通高を増やすことで圧倒的な存在になることが最初の段階です。

フェイズ1:Amazon.com+クックパッド
次は、これに「情報」を付加するというフェイズです。料理人に鮮魚を手に入れる手段を提供した後は、クックパッドのように、魚のレシピや調理法を料理人に提供することで、より良質な料理の提供に貢献します。

フェイズ2:食品流通のアスクル
鮮魚にとどまらず、野菜や肉、米や果物など、飲食店が求める食材を広く、かつ、極めて高い利便性で提供するアスクルのような存在になります。

フェイズ3:食品流通+金融流通
日本の食文化を衰退させている要因の一つとして、飲食店のオーナーの理解不足が上げられます。本来は、もっと食材にこだわって、良い料理を提供したいと思っている料理人に対して、コストのことしか考えていないオーナーが「質のことはいいから、とにかく原価を下げろ」といって料理人を縛っているという現状があります。ここを解決する手段として、料理人に融資をして独立支援をしたり、資金繰りを支援したりする「金融流通」を加えることによって、より大きな変革に結びつくと考えています。

フェイズ4:グローバル化
今までお伝えしてきたことを、海外の料理人に対しても提供していきます。2020年に年商1兆円を目指すとお伝えしましたが、そのうち国内売上高は3000億円の予定です。つまり、7000億円は海外事業で上げることを見込んでいます。

フェイズ5:食品流通+金融流通+人材流通
最終的にはここに「人材流通」が加わります。国内の料理人が海外に進出することのサポートも行います。これによって、「日本のオイシイをつくる。」「グローバルカンパニーとして確固たる価値を確立する」というレベルに到達したいと考えています。

今は、フェイズ0を猛烈なスピードで作り上げながら、フェイズ1から5までの礎を築こうとしている真っ只中です。特に、フェイズ2にあたる「取扱品目を増やすワンストップ化」や、「ロングテールで広く品目をカバーしていく動き」については当初の計画以上に前倒ししてスタートする予定です。これからが、益々面白く、そして大変になってくるはずです。

このビジョンに向かうために、今後どのように組織をつくっていきますか。

これまでは、それほどポジションを決め込まず、理念と事業に共感してくれた人を採用してきました。これからはその共感に加えて、具体的な職種のスペシャリストをどんどん迎えて、プロフェッショナルチームを作っていきたいと考えています。エンジニアはもちろんのこと、営業、マーケティング、経理、財務、総務、人事、法務、その他、ありとあらゆる職種で募集をします。しかも、先ほどお伝えしたように明確にグローバルを志向しますので、外国人の社員も増えていくことになります。とにかく、最高の組織を作るために徹底的にやるつもりです。一切、「私たちはベンチャーですから、という言い訳」をするつもりはありません。とにかく高い目標を掲げていますので、グローバルに通用する一流企業としてすべてを作っていくつもりです。

最後にメッセージをお願いします。

私たちは八方美人な会社ではありません。10人中1人にしか興味を持ってもらえないかもしれません。ただ、その1人は、「ここしかない」というほど強烈に八面六臂に惹かれて入社を決めてくれます。それは何かといえば、「日本の食文化に根本的な手を打つという大義」である人もいますし、とにかく釣好きで魚に詳しくて、「これを仕事に出来るなんて」という人もいます。それ以外には、「とにかく成長したい」、「急成長する組織で思いっきりやりたい」という、強いモチベーションの人もいます。私たちがまだお会いしたことが無い方の中にも、こういう思いを持っている人たちがきっといるのではないかと思います。ぜひ、そういう方々とお会いして、一緒に最高の組織を創り上げていきたいと思っています。

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