クックパッド株式会社
クックステップ事業部部長 山岸延好 氏
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、伊藤忠商事に入社。情報通信部門で携帯電話事業に携わったのち、自ら起業。事業売却の後、クックパッドに参画。
クックパッドという事業について、会社について、教えて頂けますでしょうか。
クックパッドは、料理のレシピを投稿・検索を中心とした日本最大の料理サイトです。100万品以上のレシピが投稿されていて、夕飯の買い物のピークである16時前後を中心に、20~30代女性の2人に1人が利用してくださっています。「今日の夕飯の献立は何にしようかな」「冷蔵庫にこういう材料があるけど、これを使って夕飯を作れないかな」といったニーズに対して、100万品を超えるレシピの中から、自分に合った美味しそうな料理を見つけるということが可能になっています。
逆に「このレシピで、こんなに美味しい料理ができたよ」という発信者になることもできるんです。 クックパッドの理念は、とにかく毎日の料理を作業ではなく、楽しみにすることです。そのことによって、本当の心からの笑顔を増やす、というのが我々の目指すところです。世の中には色々なサービスがありますが、利益が上がっていても、本当に世の中の役に立っているんだろうか、と迷いながらやっている人たちもいます。
クックパッドがやっていること、目指していることは、日々の料理が本当の楽しみに変わることで、作っている本人も、周りの家族もみんながハッピーな笑顔になる、ということです。これは、本当に誰も不幸せになることがない明確な理念だと思っています。 よって我々は日々、料理を楽しみにするための方法や、料理の周辺にある日常の小さな問題の解決を、事業を通して取り組んでいる会社です。
クックパッドは既に、1500万人を超えるユーザーを持つ大きなサービスになりました。
今後の成長戦略をどうお考えですか。
2つの軸で大きな成長が可能だと考えています。 1つはクックパッドのユーザー数という軸、2つ目はユーザーの生活シーンという軸です。ユーザー数を縦軸、生活シーンを横軸とすると、クックパッドは「日本の1500万人×料理レシピ」という「面の一部」しか獲得していないともいえます。 ユーザー数という軸については、今はまだ、ユーザー数が日本人口の10%強です。日本国内でユーザー数をもっと増やしていくことへの手ごたえはもちろんあるのですが、世界人口が約70億人であることを考えると、無限の市場があります。
少なくとも、今日の献立を決めなきゃいけない、おいしい料理を作るためにより美味しい食材を手に入れたい、といった根源的なニーズは必ずあるはずです。全世界70億人のうち、どれだけ多くの人に対して、「料理を楽しみにする」という価値を提供できるかが、今後の成長に向けた大きなテーマの一つです。 生活シーンという軸については、今まだ、今日の献立どうしよう、バレンタインどうしよう、といった「レシピ探し」のシーンがメインです。でも、実は料理の周辺にある課題って、もっともっといっぱいあるはずなんです。
それは、料理を作る手前の「食材を買う」ところもそうですし、料理ができあがって、家族と食べて、後片付けをして...という一連の流れの中で、多分もっともっと僕らにできることがたくさんあると思うんですね。幸いにして、レシピは、料理というテーマの中心にあるものなので、レシピから広がっていく領域は本当に広いと思っています。 よって、ユーザー数×生活シーンという面積でみると、クックパッドが持つポテンシャルの、ほんの一部しか事業にできていないな、という感覚があります。
料理以外の領域に展開することもあり得ますか。
「毎日の料理を楽しみにすることで、心からの笑顔を増やす」というのがクックパッドの理念であり、「料理以外」の領域に出ることは考えていません。しかしながら、「レシピ以外」に展開していくことは、大いにあり得ると思います。先ほど申し上げた、生活シーンという軸での拡大ですね。とはいえ、レシピというのは、実はすごくパワフルなものだと強く感じているんです。
例えば買い物のときに、キュウリが20本まとめて100円で売っていたとします。これ、普通に考えて「20本はちょっと食べきれないな」と思ったとしても、「こうやって食べたらどう?」という、「ソフトウエアとしてのレシピ」があれば、安心して20本まとめ買いができたりしますよね。料理という広い世界において、レシピ自体が非常にパワフルなので、意外とレシピと切り離したところに事業の種があるわけではなくて、結果的にはレシピから派生していくことが多いんじゃないかな、と思いますね。
ユーザー数という軸での「グローバル展開」については、具体的にどのようにお考えですか
世界人口70億人がターゲットになり得ることを考えると、海外展開はもちろんあり得ます。ただ、海外展開そのものが重要、という風には肩ひじ張って捉えていないんです。そもそもクックパッドは、世の中の人の料理にまつわる問題を解決して、料理を楽しみにするということを目指しているので、「たまたま地の利があるから、日本でスタートしています」という感覚なんです。
ですから、海外に行くことが先にあるわけではなく、料理を楽しみにすることがもちろん先なんですね。で、それをもう少し僕らが実現したい規模でやろうと思うと、「海外も当然に含まれる」という感じです。ですから、「とにかく海外に出たいんだ。それが転職の目的なんだ」という人よりも、「料理を楽しみにするということに共感できて、それを実現したいという思い」を「先に」持てる人で、「その後」、それを広めるために海外に出る、という発想の人の方がフィットするかなと感じますね。
とはいえ、社内には既に外国人エンジニアが10人近くいたりして、もうグローバル展開に向けて、体制としては準備ができてきているので、海外への興味がある人は、もちろんウェルカムですよ。
これだけのユーザーが日々使うサービスですから、蓄積されるデータも膨大です。いわゆる「ビッグデータ」を今後どう活用していくお考えですか。
サービスとしては、間違いなくどんどんパーソナライズされていくと思います。今は、1500万人のユーザーさんが、同じクックパッドのトップページを見ていますし、検索結果もすべて同じです。でも、ユーザー各自のビヘイビアに関するデータが蓄積されていきますので、検索結果も、広告も、その人に合わせて最適化されて、クックパッド体験がどんどん便利になったりリッチになったり、という方向でのパーソナライズに向かうべきかなと思っています。
いわゆるビッグデータが主役になって事業が変質するというよりも、より濃いユーザー体験を提供するための重要な要素、という位置づけですね。 また、データを活用して、ユーザーに付加価値を提供していく方法論の一つとして、スーパーマーケットを中心とした小売業との連携を行っています。これは、クックパッドと各スーパーマーケットが会員情報を連携させ、クックパッドユーザーがどのレシピを検索し、実際にスーパーマーケットでどの食材を購入したかがわかるというものです。
逆に小売業側にとっては、お客様がどのような背景でその商品を購入されたかを知ることによって、店舗における今後の販促や、仕入れ、売り場づくりを、より強化していくことができるというメリットがあります。 いずれにしても、データをユーザーにとっての更なるメリットに活かしていく姿勢に変わりはありません。
ここからの更なる成長に向けて、クックパッドが求める人物像をおしえてください。
ちょっと「やんちゃな人」に入ってきてほしいですね。 例えば、「私、こういうことがやりたいんです。で、世の中の会社を探したら、クックパッドが見つかりまして。私はこういう風に生きてきたし、今後こうやって生きていきたいので、その延長線上にたまたま存在する、クックパッドで働きたいんですよ」という感じで。自分が好きなものや、好きなことをはっきり言える人が向いていると思います。
最初からクックパッドの「事業そのもの」と重なるような「やりたいこと」を持ってる人ばかりではないですよ。むしろ、入社した後に見つかっていく、確信に至る、という方が圧倒的に多いと思います。入口の段階では、どうやったら会社に貢献できるだろうとか、どうやったら上司の言うことに応えられるだろうとかじゃなくて、「自分がやりたいようなことを、どうやったら実現できるだろう」という欲でいいんです。その欲があれば、行動が変わってきて、ちょっと「やんちゃ」ってことになるんだと思いますね。 一方で、素直っていうのもすごく大事なんですよね。
やんちゃと素直って、なかなか両立しなかったりするんですけど(笑)。 あとは、やっぱりインターネットが好きっていうのは必要ですね。別にインターネット業界出身である必要は全くないのですが、「ユーザーとしてインターネットが好きで、色々なサービスを使っています」とか、インターネットサービスに対して「ユーザーとして一家言ある」、といった人がフィットすると思います。
インターネットってやっぱりすごいなと思うのは、大きなビジョンの実現が、短期間でできる可能性があるということです。例えばIKEAは、世界中の人たちの住空間を変えていて、影響力のある素晴らしい企業ですが、やはり店舗を1つ1つオープンしていくというのは、とても時間がかかる話だったと思うんですよね。
それに比べてインターネットは本当にダイナミックで、スピード感があります。Facebookにしても、創業から10年も経たずに10億人に届きそうなユーザーを集めて、こんなに大きなサービスになった訳ですからね。テクノロジーをうまく生かして、すごいスピードで人々の生活を変えていく、ということに興味がある人にとって、クックパッドは相当やりがいを感じてもらえる会社だと思います。
料理やレシピに興味がない人は、クックパッドに向いていませんか。
テクノロジーを活かした事業を通して人の役に立ちたいと考えている方であれば、必ずしも料理に対しての想いが強くなくていいと思います。僕自身、前職の商社で情報通信部門にいた頃は、自分の生活と少し距離があるところで仕事をしているな、という感覚はなんとなくあって、誰かの生活を具体的に変えている、といった感覚は薄かったんです。でも、クックパッドで仕事をしていると、事業を通して、本当に身近な人たちをハッピーにしているなという手ごたえを強く感じます。
例えば年末に親戚が集まって、お料理を持ち寄って家でご飯食べたりするわけですが、そのときにやっぱり、クックパッドの話題になるんですよね、普通に。「今日、姉貴のだんなさんが作ってきたこの料理は、クックパッドのこのレシピで作ったんだよ」みたいな話が当たり前のように出てきて。それだけでやっぱりうれしいんですよね。料理だけが話題の中心にあるわけではないんですが、なんか当たり前のように身近な人たちを少し幸せにできているというか。 あとは家族以外の人でも、お店で領収書をもらうときなどに、「クックパッドです」って社名を言うと、店員さんが「ああ、いつも使っていますよ!」と声をかけてくれる、というような機会が、本当に増えてるんですよ。
例えば、僕がいた総合商社でも資源や原料を扱っているような部門だと、そういうシーンってあんまりないと思うんですね。本当に身近な人たちの日常の生活をダイレクトに変えている実感は、僕にとってはすごく大きなことですね。 一方で、身近な家族だけでなく、もう少し世の中に大きなインパクトを与えたいという気持ちはもちろんあります。
クックパッドが目指す、数十億人という規模感は、身近な人たちの生活を幸せにすることと、「世界を舞台に、これからもっともっと大きな影響を世の中に与えてやるぜ」という感覚が両立できています。世界中の人の生活をよくすることができて、かつ、自分の身近な人たちも幸せにできる、というのが料理というテーマが持つ凄さです。現時点で料理に強い関心がない人でも、きっと強いやりがいと面白さを見出してもらえるんじゃないかと思いますね。
最後に山岸さんからメッセージをお願いします。
各社、様々な経営理念、事業理念を掲げてやっていらっしゃいます。それこそ、チャレンジとか、世界を変えるとか、色々と耳触りの良い言葉が世の中に飛び交います。でも、本当に理念に沿って事業をやっている会社は、実は、多くないのではないかと思っています。 クックパッドは、その点で本当に一貫しています。これだけは自信があります。料理を楽しくすることで、もっと人は豊かになるし、笑顔が増えると本気で思っていますし、それを目指すことの意味を心から信じられる。
そして、その軸が一切ぶれない。世界が抱える大きな問題の1つに「食」の問題がありますし、普段の食事や、その周辺にある家族と過ごす時間というのは、本当に生活の根底だと思うんです。 だからこそ、クックパッドには、感謝の声がものすごくたくさん来るんですよ、ユーザーさんから。本当に毎日、それこそもう読み切れないぐらい感謝の声が届きます。 でも、入社前に完全に理解できなくても大丈夫です。
僕もそうなんですよ、ある意味。クックパッドの社会的な意味というか、ここまで大きな存在意義があるものなんだ、こんなに健全な成長ポテンシャルがあるんだ、というのは、クックパッドに身を置いて、初めて確信に至ったので。 20代や30代といった人生の貴重な時間を、どこで過ごすかは重要です。ハードワークをして自分を追い込んで、何かにチャレンジする...そのことは僕は否定しませんが、「その先にあるものが一体何か」という意味について、ぜひ良く考えてみてもらえればと思います。クックパッドには、「その先にあるもの」を持っている自信が絶対的にあります。転職先としてのクックパッドについて、一度ぜひ、真剣に検討してもらえればと思います。